赤木明登さんの漆器がもたらすもの
この器を見た時、「ああ、これこそ漆だ」と感動しました。
寒い禅寺で、修行僧が朝食をとる時に使っている光景が浮かんできたのです。
漆というときらびやかで扱いが難しく、普段使いにはちょっと敷居が高いイメージがあります。
ですが、本来は生活の中でどんどんと使うべきものなのです。
赤木さんの漆器は、木地に和紙を貼って漆を塗り、研ぐことを繰り返して作られます。
それによって、ただ分厚く作られたものとは異なるぽってりとした重みのある厚みが生まれます。
手に持ち口をつける物だからこそ、料理の温度を直に伝えないことと、心地よい手触りや口触りが重要なのです。
しっとりと馴染む肌触りが、使う人の気持ちを和ませてくれます。
温かみのあるフォルムですが、妥協のないこだわりを感じる洗練された仕上がりです。
どんな物にも馴染むのに、静かな主張を感じます。
赤木明登さんは、ご自分の作品をあえて「ぬり物」とおっしゃるそうです。
一番美しい形と色を追求し、何度も工程を重ねて完成されたマットな漆は、現代の生活に馴染む落ち着きとモダンさを持っています。
黒は食材を引き立て、料理のランクを高く見せてくれます。
落ち着きと深みのある朱は、食欲を高めて食卓を明るく彩ります。
若い世代がカジュアルに使っても違和感のない仕上がりで、子どもが使ってもとても可愛らしいです。
和食にはもちろんですが、意外と洋食にも合わせやすく、晴れの席にも普段の食卓にも活躍する万能の食器です。